ブランディングを成功事例から学ぶ
これまでいろいろな企業、団体、商品がブランディングを実施してきました。
「ブランディングを成功事例から学ぶ。」ということで、ブランディングに成功した事例から、きっかけや手段、考え方等を知る事で、ブランディングについて学んでいこうと思います。
「今治タオル」絶滅の危機からのリブランディング
「今治タオル」は今や知らない人はいないのではないでしょうか?
良質で肌触りが良く、真っ白の国産タオル。贈り物や結婚式の引き出物なんかでも利用されるブランドタオルですよね。
ですが、この「今治タオル」産地消滅の危機に追い込まれていたのです。
30年ぐらい前までは国内のタオルマーケットで大きなシェアを持っていたものの、中国やベトナムからの安いタオルが大量輸入されるようになり、かつて600社近くあったタオルメーカーが100社強にまで減少してしまいました。
この絶滅の危機に、今治商工会議所が四国タオル工業組合(当時)、今治市と連携し国の事業である「JAPANブランド育成支援事業」の認定を受け、クリエーティブディレクターである佐藤可士和という方が中心となり、ブランディングプロジェクトが動き出しました。
その結果、リブランディングに成功し、今や誰もが知るブランドへと急成長しました。
実際に行った事
- 「まずは使ってみる」
佐藤可士和さんがブランディングを始める際、今治タオル工業組合の方から「とにかく使ってみてほしい」と言われたそうです。早速その日にタオルを使ってみて、あまりの心地よさに感激。しかし、その時にふとタオルを見て、どこにも「今治」と書いていないという事に気づきました。
「今治」と書いていない。つまり他と差別化出来ていないことに気が付いたのです。今のままでは、タオルを使って「このタオルすごい!」と感じた人が今治産なのか、中国産なのかまで区別をつけることができません。
そこで他と区別をつけるためのロゴを作成することになりました。 - 「今治タオルのロゴを作成」
誰が見てもわかるようなロゴづくりを。
今治の温暖な気候ときれいな水が、質のいいタオルをつくるのに適していたこともあり、それを象徴とするロゴを作成しました。 - 「品質基準を設け、クリアしたタオルにだけロゴを付与」
すべての今治タオルにロゴを付けるのではなく、組合が独自に設定した品質基準をクリアした今治産タオルだけにロゴを付与することにしました。
ウールマークやJISマークと同様に基準をクリアしたギャランティーのマークとして運用するルールをつくりました。 - あえて「白いタオルをコアプロダクトに。」
当初白いタオルは、粗品などで配る安物のイメージだったようで、当時の今治タオルの売りは、高度な技術のジャガード織りで作られた非常に繊細な柄のタオルだったそうです。
しかし、本当に高品質、素材の良さを訴えるには、真っ白なタオルが一番のアイコンになると考え、各社に「最高級の白いタオルをつくってくれ」と頼んだところ。白といっても各社折り方や素材で微妙に違いがあり各社各様の白いタオルがずらりと並ぶと一目で素晴らしい品質感が伝わるものがあがってきました。
こうしてブランディングされた「今治タオル」はプロジェクトをスタートして4年目には生産量は回復し、売り上げも増大し始めました。 - 「タオルマイスター認定制度」
認定制度を設ける事でタオルマイスターになるのに必要な知識や技能が明確になり、熟練技術者から若手技術者にそれらを受け継ぐ効果を期待し今治タオルを生産する技術と経験を持ち、技術者の模範となる熟練技術者に与える称号をつくりました。
この制度をつくったことで、別の会社の若い職人にも技術指導できる体制となり互いに切磋琢磨しながら、産地全体の技術力向上につなげていこうとしています。
この事例から見える3つのブランディングの成功の秘訣
●まず、良さを再認識する。他社との違いを見直す。
→まず使ってみて、その商品の何がいいのか、どこが他社と違うのかをもう一度見直すことで、気付きがある。それがブランディングをするうえで重要な事なのかもしれません。
●誰もがわかるマークをつくる。
→その上で、だれもが認識できる象徴となるマークを掲げたことが今回のブランディングで功を奏したのではないでしょうか。いくらいいものを作っていても「今治タオル」であることが認識できなければ、ファンは生まれませんでした。今回の事例のように、まずは「今治タオル」であることを認識してもらうということが大切です。ブランドを認知してもらううえでマークを作ることは大変重要なポイントになります。
●外からの視点を入れる。
今回の事例では、白のタオルをコアプロダクトにした事が一つのポイントだったのですが、ずっとタオルを作ってきている人にとっては、「柄ものこそが高級品」であるという常識がありました。それを外の人の意見を取り入れ変えていくことでブランディングが成功したとも言えます。
ブランディングにおいて、外からの意見は大変重要です。変化することを恐れずに柔軟に意見を取り入れてみましょう。
今回の事例では、3つ目に挙げた「外からの視点を入れる。」ということがブランディングの成果を上げた要因ではないかと思います。
「まず、良さを再認識する。他社との違いを見直す。」これも皆さん何度もされてこられた事と思います。しかし、外部の人間だから発見できる【自分たちだけでは気付くことができない点】【見てすらいなかった点】は多くあります。
自社の製品(または、会社そのもの)のブランディングにお困りの際、一度第3者に体感してもらうことを試してみてはいかがでしょうか。
固定観念や業界の常識にとらわれず、物事を見れる外の意見を取り入れることはあなたのブランドの可能性を広げるきっかけになるかもしれません。
▽参考サイト
日経ビジネス:危機だった今治タオル、高品質を切り口に再生
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/280921/061800098/?
吉川 佳那
ブランドテーラー見習い
WEBディレクターをしながらブランドを作るブランドテーラーの見習いをしています。
趣味:バスケ、カレー、ハンバーガー、銭湯